脱AIの流れか?ギターを手に取る若者が増えている、3つの理由

脱AIの流れか?ギターを手に取る若者が増えている、3つの理由

AIが一瞬で曲を生み出す時代に、なぜ若者たちはギターを選ぶのか。デジタルな完璧さへのカウンターとしての「身体性」、SNSが変えた「音楽の共有」、そして「スキル」そのものの価値の再発見。新しい世代のリアルな音楽観を探る。

2025年09月03日5分で読める

概要

<p>こんにちは、Ammver編集部です。</p> <p>AIが数秒で曲を作り、プロ並みのトラックを生成する。そんなニュースが当たり前になった現代。クリエイティブの世界は、ますますデジタルの領域にシフトしているように見えます。しかしその一方で、実に興味深い、逆説的な現象が起きています。それは、<strong>ギターを買い求め、練習に没頭する若者が世界的に増えている</strong>という事実です。</p> <p>音楽ストリーミングサービス大手Spotifyの調査や、大手楽器メーカーFenderの近年の売上データは、Z世代やα世代といった若年層が、新たにギターを手に取っていることを示しています。</p> <p>なぜ、ワンクリックで「完璧な音楽」が手に入る時代に、彼らはあえて時間のかかる、不便で、時には指が痛くなるような「ギター」という楽器を選ぶのでしょうか。その背景には、現代ならではの3つの理由が隠されています。</p> <h3>理由1-失われた「リアリティ」を求める、身体性への回帰</h3> <p>私たちの日常は、スマートフォン越しの滑らかな映像、AIが生成した完璧な文章、加工された美しい写真で溢れています。それは快適である一方、どこか現実感の伴わない、希薄な世界とも言えます。</p> <p>ギターを弾くという行為は、その対極にあります。</p> <ul> <li> <p><strong>身体へのフィードバック</strong>: 弦を弾けば、その振動が指先から身体全体に伝わる。コードを押さえれば指先が痛くなり、練習を重ねればタコができる。この**直接的で否定しようのない「身体感覚」**が、デジタルな世界で失われがちなリアリティを私たちに与えてくれます。</p> </li> <li> <p><strong>不完全さの美学</strong>: AIが生み出す音楽は、常に完璧なリズムと音程です。しかし、人間が弾くギターは、時にリズムが揺れ、音がかすれ、意図しないノイズが乗ります。この**「不完全さ」や「揺らぎ」こそが、人間的な表現の核心**であり、聴く人の心を揺さぶる「味」となります。若者たちは、無菌室のようなデジタルの完璧さよりも、生々しい不完全さにこそ価値を見出しているのかもしれません。</p> </li> </ul> <h3>理由2-SNSが変えた「音楽の新しいカタチ」</h3> <p><img src="https://storage.ammver.com/blog/images/20250903-2.webp" alt="脱AIの流れか?ギターを弾く女性(AIで生成)"></p> <p>このギターブームは、単なる懐古趣味やテクノロジーへの反発ではありません。むしろ、<strong>現代のテクノロジーを巧みに利用した、新しい音楽の楽しみ方</strong>が背景にあります。</p> <p>かつてギターヒーローと言えば、スタジアムを埋め尽くすロックスターでした。しかし、今の若者たちの目標は、必ずしもそこにありません。</p> <ul> <li> <p><strong>ショート動画による学習と共有</strong>: TikTokやYouTubeショートには、「アニメのあの曲のイントロを弾いてみた」「1週間でこのリフに挑戦」といった短い動画が溢れています。彼らは、分厚い教則本ではなく、SNSを通じて視覚的に学び、自らの上達の過程を気軽にシェアし、仲間からの「いいね」やコメントをモチベーションにしています。</p> </li> <li> <p><strong>「共感できるクリエイター」へ</strong>: 巨大なステージに立つスーパースターよりも、同じ目線で好きな曲をカバーし、少しずつ上達していく「身近なクリエイター」に共感が集まる時代です。SNSは、音楽を「聴く」ものから、「参加し、共有する」ものへと変化させたのです。</p> </li> </ul> <h3>理由3-AI時代における「スキル」と「プロセス」の価値</h3> <p>AIが「結果」を瞬時に出せるようになったからこそ、人間が時間と努力をかけて習得する「スキル」の価値は、相対的に高まっています。</p> <p>AIが提示する「答え」は、いわば魚そのものです。しかし、ギターを学ぶことは、魚の釣り方を学ぶことに似ています。たとえ時間はかかっても、その過程で得られる知識、身体的な技術、そして何よりも**「自分の力で何かを成し遂げた」という達成感**は、AIには決して与えられない、人間ならではの報酬です。</p> <p>音楽の完成形(結果)だけを求めるなら、AIで十分かもしれません。しかし、上達していく喜びや、仲間とセッションする楽しさといった**「プロセス」そのものに価値を見出す**人々にとって、ギターは最高のツールなのです。</p> <h3>結論-未来は「AI vs 人間」ではない</h3> <p>若者たちがギターを手に取る現象は、「脱AI」という単純な言葉で片付けられるものではありません。それは、テクノロジーがもたらしたデジタルで完璧な世界に対する、人間的なバランス感覚の表れと言えるでしょう。</p> <p>AIが音楽制作をより身近で便利なものにすればするほど、私たちは、その対極にある、不完全で、身体的で、時間のかかる「リアルな音楽体験」を求めるようになる。</p> <p>未来の音楽の世界は、「AIか、人間か」という二者択一ではありません。AIが作ったトラックに合わせて人間がギターを弾き、SNSで世界中の人々とセッションする。そんな、<strong>AIと人間が互いの価値を高め合う、新しい創造性の地平</strong>が、すでに始まっているのです。</p>

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